成人 血尿診断アルゴリズム
数字は日本の基準(尿沈渣で赤血球5個/HPF以上を血尿とする)に合わせたもの。
血尿を認めた
A. 肉眼的血尿
内科として注意すべき所見はあるか顕微鏡的血尿の既往/coke-like urine(コーラ色の褐色尿)/高度蛋白尿・進行性の腎機能低下/尿路感染を疑う所見を欠く発熱/呼吸器・皮膚症状など他の全身症状/腎後性因子が否定される腎機能障害
1つ以上あり ▼
腎臓内科専門医へ 早期紹介
該当なし ▼
泌尿器科専門医へ紹介良性腫瘍・悪性腫瘍に留意する
初期検査血清クレアチニン/蛋白尿の確認/尿沈渣で赤血球形態(均一 or 変形)と細胞円柱
変形赤血球・蛋白尿・細胞円柱のいずれかあり ▼
腎臓内科へ紹介尿蛋白定量・血液検査・画像(腎エコー、CT)
異常あり → 泌尿器科疾患を除外のうえ腎生検で確定診断・治療
異常なし → 経過観察
均一赤血球のみ(非糸球体性) ▼
異常あり → 泌尿器科疾患を除外のうえ腎生検で確定診断・治療
異常なし → 経過観察
泌尿器科へ尿路上皮癌のリスクで3群に分ける
高リスクいずれかに該当:男女とも60歳超/尿中赤血球25個/HPF超/喫煙歴あり/肉眼的血尿の既往
→ 膀胱鏡検査 + CT urography + 尿細胞診
→ 膀胱鏡検査 + CT urography + 尿細胞診
中リスクいずれかに該当:男40〜59歳/女50〜59歳/尿中赤血球11〜25個/HPF/リスク因子1つ以上
→ 膀胱鏡検査 + 腎臓の超音波検査 + 尿細胞診
膀胱鏡が困難なら、膀胱と腎臓の超音波検査+尿細胞診で代用
→ 膀胱鏡検査 + 腎臓の超音波検査 + 尿細胞診
膀胱鏡が困難なら、膀胱と腎臓の超音波検査+尿細胞診で代用
低リスクすべてを満たす:男40歳未満/女50歳未満、尿中赤血球5〜10個/HPF、リスク因子なし
→ 悪性腫瘍のリスクはきわめて低いことを説明したうえで、半年以内に再検、または中リスク群に準じて検査
→ 悪性腫瘍のリスクはきわめて低いことを説明したうえで、半年以内に再検、または中リスク群に準じて検査
異常所見あり → 疾患特異的なwork upと治療
異常所見なし → 定期的な経過観察
異常所見なし → 定期的な経過観察
出典:血尿診断ガイドライン2023「血尿診断アルゴリズム(成人)」。泌尿器科側のリスク分類はAUAのリスク分類に基づき、日本の血尿の定義に合わせて作成されたもの。
リスク因子(アルゴリズム脚注)
中リスクの判定に使う「リスク因子」は次の6つ。
| アルゴリズム脚注 | ガイドライン表3(AUA/SUFU)の対応する表現 |
|---|---|
| 有害物質への曝露 | ベンゼン化合物や芳香族アミンへの職業的曝露(ゴム、石油化学製品、染料) |
| 排尿刺激症状 | 下部尿路刺激症状 |
| フェナセチンなどの鎮痛薬多用 | (表3には記載なし) |
| 骨盤放射線照射の既往 | 骨盤臓器への放射線照射の既往 |
| シクロホスファミドの投与歴 | シクロホスファミドまたはイフォスファミドを用いた化学療法歴 |
| 尿路への異物の長期留置 | 尿路の慢性的な異物留置 |
| (脚注には記載なし) | 尿路上皮癌の家族歴あるいはリンチ症候群 |
出典:血尿診断ガイドライン2023 血尿診断アルゴリズム脚注*2、および同 BQ 泌-2 表3(AUA/SUFUガイドラインからの引用)。2つのリストは完全には一致しないため、両方を併記した。
在宅患者で注意すること
尿道カテーテルの長期留置は、それ単独で「リスク因子」に該当する。
さらに60歳を超えていれば、その時点で高リスク群となる。高リスク群に示されている検査は膀胱鏡+CT urography+尿細胞診で、通院困難な在宅患者には現実的でない場合がある。
このアプリはガイドラインが示す標準を表示するだけで、実施可否の判断はしない。本人・家族の意向、ADL、予後を含めて、どこまで精査するかは別途の相談になる。
さらに60歳を超えていれば、その時点で高リスク群となる。高リスク群に示されている検査は膀胱鏡+CT urography+尿細胞診で、通院困難な在宅患者には現実的でない場合がある。
このアプリはガイドラインが示す標準を表示するだけで、実施可否の判断はしない。本人・家族の意向、ADL、予後を含めて、どこまで精査するかは別途の相談になる。
このアプリの土台
血尿診断ガイドライン2023
日本腎臓学会・日本泌尿器科学会・日本小児腎臓病学会・日本医学放射線学会・日本臨床検査医学会・日本臨床衛生検査技師会 編/ライフサイエンス出版/2023年6月30日発行
2013年版から10年ぶりの全面改訂。原因疾患を診断するための手順を「血尿診断アルゴリズム」として初めて提示した版。
⚠ このアプリの記載は、日本腎臓学会サイトで公開されたパブリックコメント版PDFから作成した。書籍版と文言が異なる可能性があるため、正式な引用の際は書籍版を確認すること。
頻度・確率
顕微鏡的血尿を呈する者における尿路悪性腫瘍の有病率
0.2〜5.2%(14文献)
ガイドライン自身の注記:報告された有病率は「実際に精密検査を受けた患者数」を分母としており、年齢・喫煙歴をもとに精査を強く勧められた患者を多く含むため、真の有病率はより低い可能性がある。
出典:血尿診断ガイドライン2023 BQ 泌-2
中リスク集団における尿路上皮癌の検出率
1〜3%程度
出典:血尿診断ガイドライン2023 BQ 泌-5
血尿1,930例の前向き解析(原因疾患の内訳)
Khadra MH, Pickard RS, Charlton M, Powell PH, Neal DE. A prospective analysis of 1,930 patients with hematuria to evaluate current diagnostic practice. J Urol. 2000 Feb;163(2):524-7. PMID: 10647670
原因不明 61%/膀胱癌 12%/尿路感染症 13%/結石 2%/上部尿路腫瘍 0.7%
この内訳は肉眼的血尿・顕微鏡的血尿を合わせた全1,930例のもの。肉眼的血尿だけに限った内訳は抄録には示されていない。ガイドラインが参考文献として挙げている論文。
無症候性顕微鏡的血尿1,034例の前向き研究
Murakami S, Igarashi T, Hara S, Shimazaki J. Strategies for asymptomatic microscopic hematuria: a prospective study of 1,034 patients. J Urol. 1990 Jul;144(1):99-101. PMID: 2193173
ガイドラインが参考文献として挙げている論文。数値は原著未確認のため、このアプリでは引用していない。
検査の性能
尿細胞診
感度 0〜59%/特異度 97〜100%(メタ解析)
感度が低いため、陰性でも尿路上皮癌は否定できない。ガイドライン本文も「尿細胞診は尿路上皮癌に対し特に感度が十分でなく、スクリーニングとしてルーチンに施行することは推奨されない」としている。
出典:血尿診断ガイドライン2023 BQ 泌-3
尿潜血試験紙(尿沈渣を基準としたとき)
感度 60〜80%/特異度 78〜97%(試験紙・装置により差がある)
試験紙が陽性というだけでは血尿と診断しない。尿沈渣で赤血球数を確認するのが起点になる。試験紙では赤血球形態も分からないため糸球体性の鑑別もできない。
出典:血尿診断ガイドライン2023 BQ 臨-4、BQ 臨-5
CT urography(膀胱癌の検出)
感度 40〜100%/特異度 87〜99%(11文献)
出典:血尿診断ガイドライン2023 CQ 画-1
CT urography と超音波の直接比較
Knox MK, Cowan NC, Rivers-Bowerman MD, Turney BW. Evaluation of multidetector computed tomography urography and ultrasonography for diagnosing bladder cancer. Clin Radiol. 2008 Dec;63(12):1317-25. PMID: 18996261
超音波:感度 69%(95%CI 49.2–84.7)/特異度 94.7%(88.9–98)
CT urography:感度 89.7%(72.7–97.8)/特異度 96.5%(91.3–99)
CT urography:感度 89.7%(72.7–97.8)/特異度 96.5%(91.3–99)
特異度は同程度だが、感度はCT urographyが有意に高い。
膀胱鏡
感度 98%
出典:血尿診断ガイドライン2023 BQ 泌-5
赤血球形態による鑑別
変形赤血球(糸球体型)と均一赤血球(非糸球体型)
均一赤血球(非糸球体性血尿):萎縮状・円盤状で形態がほぼ均一。ヘモグロビン色素に富むことが多い
変形赤血球(糸球体性血尿):コブ・ドーナツ状、標的状など多彩な形態。赤血球円柱や蛋白尿を伴うことが多い。とくにコブ状・有棘状・出芽状(acanthocytes)は、数が少なくても糸球体性血尿の診断的価値が高い
変形赤血球(糸球体性血尿):コブ・ドーナツ状、標的状など多彩な形態。赤血球円柱や蛋白尿を伴うことが多い。とくにコブ状・有棘状・出芽状(acanthocytes)は、数が少なくても糸球体性血尿の診断的価値が高い
ガイドラインの限界の記載:光学顕微鏡・位相差顕微鏡・フローサイトメトリーのいずれの方法でもすべての血尿について分類できるとは限らず、形態的に糸球体性血尿が疑われる場合でも非糸球体性血尿を否定できない。また、糸球体基底膜が破綻するような疾患や大量の尿中赤血球を伴う場合は変形赤血球が認められないことがある。
出典:血尿診断ガイドライン2023 BQ 臨-2
このアプリに載せていない数値について
作成過程で参照した二次資料には、超音波の感度72%・特異度91%という数値があった。しかし出典として示されていた Knox 2008(PMID 18996261)の抄録を確認すると、実際は感度69%・特異度94.7%であり一致しなかった。
このため、原著または血尿診断ガイドライン2023の本文で確認できた数値だけをこのアプリに載せている。裏が取れなかった数値は、たとえ有名な論文の引用として流通していても掲載していない。
免責:本アプリは血尿診断ガイドライン2023(パブリックコメント版PDF)に基づく参考ツールであり、個々の患者の診療方針を決定するものではない。小児は対象外(ガイドラインには小児用の別アルゴリズムがある)。患者情報は一切入力・保存されない。すべての処理は端末内で完結する。